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このブログは、作者のキャラの小説など暇なときの書き込み・・・つまらないものの塊です

ワールド ディスピアー 3

入隊してから約三ヶ月の寒い冬。

 
 
天界時刻 冬の時 14日  午前8時
 
「さっ寒い……天界の冬はこここここんなに寒いのか……」
俺は厚手でベージュの長袖のパーカーに手をつっこむ。
外はしんしんと雪が降り、部屋の窓は白くくもっている。
「朝ご飯なにがいい?」
「あ〜寒いっ零 おはっす トーストでいや」
「おはよう じゃあそこの食パンとって」
 
零と俺は三ヶ月前に憧れていた天界の政府直属の部隊 戦闘特化部隊に入隊することができた。
天界の部隊には三つあり、攻防部隊  情報部隊 そして戦闘特化部隊だ。
そしてこの三つの部隊を基準として様々な集まりができ これらをまとめて 天界軍 と呼ぶらしい。
 
俺と零はその政府から部隊に与えられた部隊寮に同じ部屋で生活している。
もちろん寮に入るかは自由だが まぁ俺たちは金がないもので 部隊の者は食事を含めて金のかからない寮で暮らしている。
 
「今日は私たちも先輩たちの戦闘練習に参加していいって グラディウス副隊長が言ってたよ」
「なっ………!よっしゃぁあ!!楽しみだなぁー!」
「……そうね グラディウス副隊長がなにか他にも言っていた気もしたけど〜」
「ふぉんなん……んぐっどうでもいいじゃん!」
俺は零によってだされたトーストにかぶりつき のみこんだ。
トーストはこんがりと良い匂いがして正方形のバターはトーストの熱によっていい感じに溶けていてとても美味しかった。
「バーナー そうえばー」
「なんだよ?」
「天界きてから初めての雪だけど私たち思えば三ヶ月たってるじゃない」
「そんなにたって……るかー」
「私たち隊長に会ったことないわ」
「はぇ?」
「憧れていたアモル隊長に会ったことがないと言ってるの」
「…そーえば……会ったことないなーあっでも噂によると隊長はもう一つ仕事があるって聞いたことあるぜ」
「私も噂で隊長が返り血まみれだったところを見た一般人がいるって」
「…………隊長って実はめっちゃ恐ろしい人………なのか……」
「……きっと身長高くて鋭い目をしてるに違いないわ」
「でも……俺たちを助けてくれた時は優しい人にみえたぞ?」
「そんなの小さい時の記憶でしょ?」
「でも俺は!小さい時の記憶でも鮮明に覚えてるぜっ」
そう。
俺たちがこの部隊に入りたい と思ったのは幼少期 人間は天界と戦争が起きたことがあった。
その戦争は 人間が天界に喧嘩を売り 戦争を起こしそして天界に勝利して天界を我ら人間の地にしようと。
なんともくだらない と天界は思ったのだろう。
天界は人間たちを無視してきたが……。
戦争を望む者と平和を望む者で人間たちは争いをはじめ 罪のない犠牲者が次々と生まれた。
俺たちはその争いのど真ん中の村に住んでいたため、村が襲われその時一緒に遊んでいた零と争いの炎に巻き込まれ、犠牲者の一人になってしまう そう諦めかけた。
その時、翼の生えた人が俺の前に現れた。
俺たちを殺しに来たのだと思った。
だがその人は俺たちを襲いに来た人間を次々と倒していく。
「諦めるな!!」
その言葉で俺は意識がはっきりした。
激痛に耐えながら声のした方をみると 鞘をぬいていない刀で敵を殺めずになぎ倒していく人影をみた。
 その人は俺たちを下敷きにしている瓦礫をどかしていった。
 
「お前は…………誰……?」
「私は天使 戦闘特化部隊隊長アモル=テラスだ 諦めるな 今助けてやるから」
アモルと名乗った人は瓦礫をキレイにどかして 俺たちの怪我を治療してくれた。
「あっあの……ありがとう!助けてくれてありがとう!俺……貴方みたいに強くなりたい!」
去り際に俺はそう言ったら そのひとは後ろを向いて 微笑んだ。
「そう……君が強くなれるかは君しだい。光で心身共に強くなるか……闇で心を黒く染め強くなるか……立派な戦士になった時…私に顔をみせて。」
そう言うと翼を広げて空を飛び去っていった。
 
 
「………かっこよかったなぁ……」
「そうだね〜……凜としてたよね〜…」
 
俺と零は同じ思い出に浸っていたらしくぼけーっと窓の外をみている。
「俺……隊長に会って手合わせしてぇ………負けてもいいわ」
「え……いやいや無理無理だってナンバー4でしょ?」
「そーだよなぁあー!………天界でナンバー4って3から上は化け物か!」
俺は一口でトーストを口におしこみ 皿を流しに置き、椅子に腰掛ける。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
俺は椅子から立ち上がり、パーカーの袖を引っ張り手を隠しドアノブをひねり 「はーい!」と、ドアをあける。
すると元気な声で返事がきた
「あ ごめんねー!いきなりで悪いんだけど、アモルって人の部屋わかるかな?」
「……えっ…とー……どちら様ですか?」
目の前には黒いローブを着て背の高い男の人で左側の髪を結んでいる。
後ろにも男の人がいて、白いマフラーで口をかくして明るい茶色のコートを着ていてこちらも背が高い。
どちらも雪をかぶっていて、男の俺でもみとれる美男子である。
だけど二人とも部隊では一度みたことはない。
「あれ?新入りさんかな?ごめんごめん 俺はインセット=テラス、こっちの白マフラーはレイト・ティア・ウル ここの隊長に用があって来んだけどー…」
「隊長ですか……申し訳ないんですけど……ん?テラス…どっかでー……」
俺が首をかしげると奥にいた零がドタバタと玄関に来て、
「バーナー!!!!こっこの人たち!」
「うおっ!」
レイトさんがびっくりして一歩引く。
「どうしたんだよー失礼だろー」
「この人達天海のトップだよ!!知らないの!?天海の5人の守護者!天海のナンバー5と3だよ!!!」
「はえ?」
「5人の守護者っていうのは、天海のナンバー1から5の5人のこと!!ルーファス皇子、ライト皇女、レイト皇子、アモル隊長、インセット軍師 からできている天海最強のひとたち!戦場に立ったら生きてる敵は居ないって言われていて!!」
そのとき インセットさんが零を見ていた俺の肩をポンポン叩いて
「君ー少し大げさじゃないか?俺たちそんな非人道的なことしないしーそんな強くないからなー」
苦笑いしながら手を横にふる。
「そうそう。それはただの噂だよ どこの誰が流したのやら」
そう言いながらマフラーに顔をうずめている人に俺はずいっと近づき、
「レイト……皇子!?」
「お、おう……なっなんだ…?」
「皇子がこんな所ウロウロしていて大丈夫なのですか!」
「え…あぁー大丈夫大丈夫 あと俺のことわざわざ皇子つけなくて普通にレイトで大丈夫だぜ」
白いマフラーの下から微笑む。
イケメンだわ。
いや…俺はお言葉に甘えたいのはやまやまなんだが……。
「そうさせて頂きたいのですがー……一応皇子となると身分が」
「大丈夫大丈夫 俺身分とか地位とか嫌いなんだよ」
確信した イケメンな上に良い人だ。
「あ そうそう君たちの名前聞いてなかったっね!」
「あ 俺はバーナーです それでこっちの女は零です」
「ど……どうも 零です」
「……みたとこお前らけっこう若いな…15歳ぐらいか?」
「あ はい!………あっ隊長の部屋でしたね!案内します。俺自身隊長に会ったことないんですけど……」
「悪いね〜バーナー君」
「私も行くっ」
靴を履きながらインセットさんに「大丈夫です!」と言い、部屋の明かりを零に消してもらい鍵をしめる。
もちろん この部屋の鍵も魔法が使われていて俺たちじゃなきゃ開けられない仕組みになっている。
俺は鍵がしっかり閉まっていることを確認し、ドアにかかっている札を「不在」の文字に変えた。

もちろん俺はこのあとトラウマになる怖さだなんて知りもしない。










俺はレイト・ティア・ウル。
この国の第3皇子であり、次期天界の王に期待されている。
俺にはその期待がとても重く、今にもこの期待という重石を投げ出してあの場所であいつと………。
俺はそんな叶わぬ夢を思い描いた自分を笑い、席を立つ。
この期待は決して解けぬ鎖なのだと、この思いは忘れてはならぬ枷なのだと。
俺はここに戻ってきた時そう決めたではないか、お前は死ぬまでこの手枷を心の自分につけ、同じ過ちを犯さぬようにと。
俺には大切な家族がいる、妻、二人の息子、自分の兄と姉。
だからこそ もう同じ過ちを繰り返してはならない。
俺は部屋を見渡す。
扉の金の取っ手は使い古し光が濁って雰囲気がでている。
その扉も美しい彫刻が施されている。
美しくまるで輝きをもつような赤と金の絨毯。
人1人楽に寝れるぐらいでかく、大木からこの形にするために彫ったであろう跡が残る俺の仕事机。
この部屋はとても広く余裕に四人以上の家族が暮らせるだろう。
その木でできた壁に端から端まで並べられた本棚。
………この部屋には俺と机と本棚、絨毯と来客者と話をするために置かれたふかふかのソファと机それからいつでも外出できるように置いてあるタンス。
「……まるで豪華な牢屋だな」
この部屋はとても堅苦しい。
空気が重い。
他人には王族のために作らした豪華絢爛な広い部屋としか思わないだろう。
きっと目に映る物は輝いて眩しいほどなのだろう。
だが部屋が暗いせいか、またはここに来ると気持ちが暗くなるが今日はその気持ちが一倍暗いせいか………。
何故か全てを暗い方に考えてしまう。
窓の外をみる。
窓には自分の顔が写っている、とても酷い顔をしていてくまができている。
外ではしんしんと雪が降り、子供たちが楽しそうに雪だるまを作っている。
こちらの視線に気づいたのか子供たちが誰が俺に手を振るか言い争っているようだ。
そんな子供たちに俺は笑顔で手を振ると子供たちは無邪気な笑顔で振り返してくれた。
………そうだ。
俺だってたまには楽して…遊んで……笑って……1日ぐらいこの期待という重石を振り払ってもいいだろう。
そうえば アモルが4ヶ月ぶりに任務から帰ってくると妻のキャンディーから聞いた。
ならはじめにインセットと一緒にアモルをからかいに行こう。
どうせ身長は変わっていないのだろう。
俺はタンスに近づき勢いよく開ける。
適当に服をえらび今着てるダボダボの外にきてくにはちょっと寒い上着をぬぐ。
「最近………たるんだかな……?」
前は腹筋がまぁまぁあったんだが最近は籠りっぱなしだったので気のせいかもしれないが二の腕の筋肉も少し落ちた気がする。
別にマッチョになりたいわけではないのだが……やはり少し気になってしまう。
仕事が最近忙しかったが多分冬に入ったので活発に動く部隊も減って少しは仕事が減るだろう。
タンスの内側についている姿見を横目でみると横腹あたりに痛々しい火傷の跡がある。
突然 その火傷がなにかを思い出したかのように疼く。
世界の色が消える。赤と黒に変わる。
どくんっ…どくんっ……と 鼓動の音が早くなる音が聞こえる。
自然と息が上がり、汗がでてくる。
あの……悪夢が………脳裏で蘇る。
「ぁ……はっ……ゔぁ………ゔぇぅ」
吐き気が込み上げてきて、涙がでてくる。
視界が炎と血で覆う。
その瞬間声がして我にかえる。
世界が色を取り戻した。鼓動の音が落ちついてくる。
「おいっ!大丈夫か!?」
「………はぁ……はぁ…………お前か」
何故ここにいるかわからないがインセットが俺の背中に手をおき、心配そうな顔で覗きこんでくる。
「べつに何でもねぇよ……」
「何でもなくないだろ!俺は医者でありお前の友達だっ何でも話してみろよ」
「………とにかく……何でもないんだ……お前こそ なんでここにいるんだよ…どうせ俺に用があるんだろ」
「………はぁ…任務終わったから報告書届けにきたんだよ」
俺の背中から手を離し、机に置いてある紙束をとってパタパタやる。
でも……助かった。
インセットが来なければ俺はきっと叫んでいた。隣室にいるキャンディーにまた心配をかけてしまう。
心の中で感謝の言葉を呟く。
そうだ。
インセットを連れてアモルのとこに行くのだった……このあと暇か聞かなければ。
「なぁインセット、お前この後暇か?」
「暇だけど……何かするのか?」
「アモルのとこに行かないか?」
「アモル?1年はかかる任務じゃなかったのか?」
「いや……それがそうでもなくてだな、4カ月で任務を果たして今日丁度帰って来たそうだ…そこで……たまには遊びにいかないか?」





あの少年との出会いが運命の始まりでありそしてそれは





終わりを意味していた





これを知るにはもう手遅れだったのかも知れない。




俺がこれに気付いたのは
『世界』が消滅する前だった。



闇が『世界』を飲み込む あの時に。









  
                       *あとがき*
ワールド ディスピアー 3話 閲覧いただきありがとうございます。
cierです。
今回は書きたい衝動を抑えつけられずにバーナーの話がいきなりレイトの話に…。
あっ今回初登場のインセット レイト君ですが案外大事な奴らなんでよろしくお願いします。
レイト君にはビシバシ働いてもらう予定です。
絵はどうしたんだ?ですって?
見逃してください。
すいません。
さて、私はシリアスが大好きなので展開がよく悲しい方向にいくかもしれませんが、次回は戦闘シーンをだす予定です。
皆さんに戦闘シーンを頭で想像できるような感じに頑張ります。
多分まったく戦闘になりませんが…。